ASI x Panda
先だってご紹介した、本格的な「正史」ともいえる初期型FIATパンダの公式ガイド
「Fiat Panda – L’intramontabile」。
とても良い本だったので、出版元であるイタリアのクラシックカー&バイククラブであるASI(アージ)と交渉し、同書内の写真や文章の日本語翻訳版の掲載をお願いしたところ、なんと正式に許可をいただきました。
ついては、ASI広報担当のフラヴィオ・メルゴッティ氏から「ぜひともウチの活動内容についても紹介しておいてほしい!」との依頼を受けましたので、改めて彼らの活動についてご紹介させていただきたいと思います。
© ASI Service srl
ASIとは?
「ASI( L'Automotoclub Storico Italiano)通称アージは、イタリアにおけるクラシックカー&バイク文化を守る代表的な連盟で、300以上のクラブと150,000人以上の会員を擁しています。
ASIは、これらの活動の保護育成、促進のために、政府機関との関係を密にし、イベントや文化的な取り組みの実現をサポートしています。さらに、厳しい品質基準を満たす車両の認証を行ったり、貴重な車両のコレクションやアーカイブを保護し、その文化的・歴史的・社会的な重要性の向上に努めています。
イタリアでは、ASIに登録した車両には、税制上ならびに公道走行の優遇措置が認められています。
ASIの広報活動は、世界で最も広く読まれている業界月刊誌『La Manovella』の発行や、ASIサービスを通じて運営される『イタリア歴史的オートバイ協会ライブラリ』の書籍出版などを通じて行われています。」
簡単にいうとアージ(ASI)とはクラシックカーやバイクの保護や文化育成に注力している団体です。
なかでも有名なのが、彼らの発行するタルガ・オーロ(ゴールドプレート)。
オリジナルを保っていることを証明してくれる、いわば血統書のようなものです。
そんなわけで、イタリアの大きな自動車イベントでは必ずASIの立派なブースがありますし、様々なイベントがあったり、グッズや書籍も販売しています。
イタリアの旧車界においては、絶大なる信用と権威をもつ団体であり、彼らがこうして初期型パンダについての公式ガイドを出したということは、いよいよ名車としての確固たる地位を築きつつある証明であるわけです。
やはりイタリアやフランス、ドイツなど、いわゆる自動車文化における先進国のこうした組織の活動を見るたびに思います。
早く日本もそうなってほしい!
さて、それでは本書の内容について、せっかく公式に認可もおりたことですし、一部をご紹介したいと思います。
ジウジアーロ御大のことば
この本以外にも、各種メディアにパンダの件で登場されているジウジアーロ先生ですが、もちろんこの本でもしっかりと序文を寄せてくださってます。
「少し前、ナポリで道を歩いていると、若者のグループに呼びとめられました。どうして私だとわかったのかは不明ですが、彼らは自分たちの乗っているパンダにサインをしてほしかったようなのです。彼らのパンダはすぐそばに停まっていて、完璧な状態とはいえないものだったけれど、まだ元気に走っているようでした。
私はいつもポケットに入れているステッドラーのペンを取り出し、サインしようとしましたが、若者の一人が私に『マエストロ! あなたのサインはすぐに消えちゃわないものじゃないとダメです!』と、満面の笑みを浮かべて言いました。
その後そのナポリのパンダがどうなったのかは分かりませんが、おそらくサインのおかげで、いい値段で売れたのかも知れませんよ。
最近、パンダの40周年の祝賀イベントがあり、私も参加しました。
いうまでもなく、パンダは私にとって最も愛着を感じる「娘」のような存在だからです。
パンダは、時代を超えて生き残りました。それは、機能こそがが享楽的な喜びや美しさを超えたからです。
自動車をデザインするにせよ、ナイフや椅子をデザインするにせよ、基本的なルールは同じです。
もちろん、自動車を作るのには非常に複雑で、守るべきルール、つまり規制や制約が無数にあります。
ですから、パンダを理解するには、設計された当時、つまり40年前の今とは異なる「規制や制約」といった文脈を鑑みる必要があります。
エンジニアを担当したアルド・マントヴァーニと共に、工学面、機能面、そしてデザイン面の研究を組み合わせ、結果として質素かつ必要最低限な要素を追求することで、一種の美しさを持つデザインを生み出しました。
それは、シンプルさを好む層にも、いわゆる知識人と呼ばれる層にも好まれました。
何より、そんな彼らすべてにとって「便利な車」となったのです。」
自動車とデザインに関心が高い人にとっては、ジョルジェット・ジウジアーロは一つの指標だといえます。
彼は、これまでに製造された中で最も美しい車のいくつかをデザインし、革新的な解決策を生み出す才能が世界中で認められています。
本書では、彼へのインタビューに基づき、パンダのアイデアがどのように生まれたのか、そのプロジェクトに関連するすべての側面やその起源を振り返っています。
見た目にはシンプルで直線的なデザインですが、その基盤となるアイデアは非常に革新的で現代的でした。
さらに、そこで生まれたいくつかのソリューションは、これまで自動車に採用されたことがないものでした。
パンダは、70年代の暑く晴れわたる夏に誕生しました。ジウジアーロがその話をするとき、今でもその車に対する彼の熱意が伝わってきて、その思いを溢れんばかりに語ってくれます。
続いてはASI代表のアルベルト・スクーロ氏の本書についてのコメントです。
すべてのパンダに未来を!
ASIでは、イタリアの小さな名車をテーマにした書籍シリーズを発行しています。
これはイタリア国内の自動車生産史における重要なマイルストーンとなる車種に焦点を当て、好評を得ています。
パンダが登場した1980年代、「もしパンダが存在しなかったら、発明しなければならなかっただろう」という有名なスローガンがありました。
フィアット500と並び、イタリアに欠かせない存在がパンダなのです。
本書にはすべてのバージョン、すべてのカラー、すべての装備が揃ったパンダが登場します。
パンダのあらゆるディテールを網羅したこの本が、フィアットの現代史を大きく特徴づけたモデルを発見(または再発見)するための貴重なガイドとなることでしょう。
この本は、初代パンダというイタリアの「名作」をコレクションに加えたい人や、すでにパンダを所有していて、100%オリジナルな仕様を尊重しつつ、完璧なレストアに挑戦したい人にとって、必要不可欠な一冊になること間違いありません。
ASIが特に重視しているのは「オリジナリティ」というテーマです。
オリジナリティとは、歴史的な車両を長期的に保護するために尊重すべき基本的な価値です。同時に、わたしたちイタリア歴史自動車クラブたるASIが発行する認証の基盤であり、愛情をかけて大切に保存している過去の車両に、未来を与えるために考えられたものです。
これらの車は、人間の知恵、技術、社会、文化の発展を具現化した証拠として、全人類にとって具体的な遺産となります。
わたしたちは、この情熱を共有し、それが国の主要機関に認められたという幸運に恵まれています。
だからこそ、この本は非常に重要な役割を果たしています。
疑問があれば参照し、次なるパンダ「Targa oro ASI」を手に入れるために、ぜひこの本をしっかりと学んでほしいと願っています。
ASIサービスの出版物の目的は、クラシックカー文化を広め、歴史的車両を愛するコレクターにとって、オリジナリティを尊重した基本的なツールを提供することです。
あなたの「パンダ」と一緒に、最高の旅をする準備はできていますか?
それなら、シートベルトを締めて、未来へ出発しましょう!
このように、本国旧車界における「お墨付き」がでたことをあらわしていますよね。
ちなみに本書では、Fiat Pandaの誕生、進化、2輪駆動および4輪駆動モデルの発展について取り扱っているのですが、その概要にも触れたいと思います。
↑当時のFIAT代表、ジャンニ・アニエッリにお披露目したときの貴重な写真
本書ではフィアットが製造し市販したバリエーションおよび仕様のみに絞り取り上げています。
したがって、多くの読者が期待するような、車体改造やチューニングに関する内容は含まれていないため、失望される方もいるかもしれません。
数々の改造の中には、モレッティ、シオネリ、フィッソーレ、マッジョーラ、ストーラといったカロッツェリアやチューナーが関わり、1930〜50年代のアルファ・ロメオやランチアの名車たちと同様に、パンダをベースとした個性的でユニークなモデルを作りだしていました。
単にステッカーを貼っただけのものから、内装を改造したもの、さらには「スピアジーナ」(海岸走行用のドアなしオープンモデル)やピックアップトラックなど、大規模な改造モデルなどが存在しました。いずれのスペシャル・パンダは独自の個性とオリジナリティを持っていますが、本書でこれらを取り扱わなかった理由はいくつかあります。
まず、わたしたちは、ジョルジェット・ジウジアーロが手がけたシンプルで、頑丈で、広いスペースを誇るパッケージング、そして多用途性という、当初のフィロソフィーを尊重し、本書の主軸に据えたかったからです。
初代パンダのもつこの思想は、フィアットの経営陣にも非常に気に入られ、今日の目で見れば、彼らがその生産を承認したことは非常に勇敢であり、遠い将来を見据えた決断だったと言えるでしょう。
もう一つの理由は、パンダ「クラシック」(1980年から2003年までに製造された3ドアのモデル141)についての体系的で詳細な資料が十分に存在していないためです。
ちなみに、スペインでライセンス生産されたセアト・マルベイラについても扱っていません。
本書を通じてパンダの進化を詳しく紹介し、技術的、審美的、内容的な詳細を提供することで、読者が自分のモデルを特定し、オリジナルの仕様に従って保存または修復し、ASIの認定(歴史的な重要性を証明する証明書や、認定証明書など)を簡単に取得できるようにすることが目的です。
これらの認定は、特にパンダのような車両において、オリジナルに忠実な正確な個体を保存するための最適な手段です。
このため、当時の資料、販売員用ノート、ディーラー向けのパンフレット、顧客向けのカタログ、雑誌のテスト記事を参考にし、年ごと、時には月ごとのモデルの進化を追い、パンダという「現象」をできる限り体系的で分かりやすい形で読者に提供することを目指しました。
最後に、今もまさに活躍しているパンダたちの写真を添えることで、パンダがすでに伝説であり、またたくさんの人たちがその歴史に自分の章を書き加えたいと願っていることをみなさんにお伝えしたいと思っています。
©Giorgetto Giugiaro
本書は、日本でも一部通販で購入が可能になっているようです。
オーナーさんや、パンダにご興味がある方はぜひ本書を手に入れてみてください。
英語も併記されていますので、いかに近隣諸国でもメジャーな存在であるかがわかります。
というわけで、マブチモータースでは、引き続き「いい感じ」の初代パンダを探し続けたいと思います。
引き続きよろしくお願いします!